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2021年8月 夏の薬膳 大分県の孟蘭盆会の郷土食

目からウロコの調理学

夏の薬膳 大分県の孟蘭盆会の郷土食

1.大分県とは

 九州の北東部に位置する大分県は、日本一の温泉をうたう県として魅力を発信しています。
 この大分県では、大半の地域で大分弁が話され、明るく、気さくで、お人好しで、前向きで、ポジティブな思考の人が多いですね。私の祖父も大分県中津市の出身で、私も大分弁が少し入っています。
 大分県の県名は古代国府の大分郡(おおもたごおり)に由来していると言われます。県全部と福岡県の東部を豊国と呼ばれ、7世紀頃に豊前国と豊後国に分かれています。  鎌倉時代、室町時代に大友氏が守護となり、戦国時代の当主である大友義鎮(宗麟)は最盛期であり、中国やポルトガルとの交易で南蛮文化も導入され、キリスト教も積極的に保護され、自身もキリシタン大名でした。
 この大分県は、気候によって気象庁は4地域に分けています。
①北部(中津市・宇佐市・豊後高田市・国東市・姫島)
②中部(杵築市・日出町・別府市・大分市・由布市・臼杵市・津久見市)
③西部(日田市・玖珠町・九重町・竹田市)
④南部(豊後大野市・佐伯市)
 この4つの地域で各農作物が作られ、その各地で郷土の料理が育てられ発展して今日に至っているのです。

2.孟蘭盆会の行事食である郷土食

 ご先祖様の精霊が帰ってきてくれる8月13日から15日の期間の行事が孟蘭盆会です。生前のご恩に感謝し供養する時のおもてなし料理です。
 供物は落雁、素麺、茄子、胡瓜、そして桃などの果物です。
 行事食は精進料理そのもので、動物性の食材を使用せず、五葷(ごくん)と呼ばれる「にんにく、ねぎ、にら、たまねぎ、らっきょう」などは避けます。この料理は僧侶に必須であり、行の一つでもあるのです。仏教の戒に基づいて殺生や煩悩の刺激を避ける調理品なのです。
 食材は家で収穫されたものや、知人の農家で作られた野菜や果物を使います。
 夏の旬の野菜こそが中医学の寒性・涼性の食材で夏の健康に寄与する食材そのものなのです。
 献立は、ご飯と、漬物を数えずおかず5品と、けんちん汁の二汁五菜が基本です。

【1】主食

 仏教の主食は白米。大分県では、夏あずきと言われる「みとり」豆が収穫できるので、赤飯を炊きます。
 今回は新茶を使っての茶飯で紹介します。

【2】汁物

 食材は昆布、干ししいたけ、かんぴょう、炒った大豆を水に漬けて加熱して出汁を取る。植物性食品でも、相乗効果で旨味を強くしてくれます。

【3】おかずの乾物・大豆

 ・季節の旬の野菜と乾物を戻して一緒に調理します。(しいたけ、野菜、かんぴょう、高野豆腐、ひじき、胡麻など)
 ・特に大豆は栄養価は高く、菜食で不足しがちなタンパク源となる。
 ・生大豆は食べないこと。未加熱の大豆にはトリプシンインヒビターという、膵臓から分泌する消化酵素のトリプシンの作用を阻害する成分を含んでいるので食べないこと。
 ・大豆は豆鼓、味噌、しょうゆ、豆乳、湯葉、豆腐、油揚げ、高野豆腐を生み出している。
 ・中国では「仿葷素菜」もどき料理、大豆を使用した料理を上海中医薬大学の郭忻教授に学びましたので、今後紹介しましょう。

【4】調味料

 米や大豆を発酵して作られた清酒、みりん、しょうゆ、味噌、酢、そして砂糖や塩を使います。
 京都で和食を作る時、八方出し汁といって、「出し汁:みりん:しょうゆ=8:1:1」で煮物が作られます。しょうゆを塩に変えて、白く仕上げる時は1/5量、みりんを砂糖に変えるには1/3量をメドに使うとよいでしょう。
 そして油脂類は各種。

【5】調理方法

 日本の単純な食材を上手に水戻しをして水煮したり、あく抜きをする。時間と手間をかけて下処理をする。そして一次・二次加工して複雑な味に。食べた時に、人が感動して「美味しい」と発していただける料理ができあがるのです。
 コロナ禍、是非伝統的な日本の調理操作を用いて、お盆の料理に挑戦してみて下さい。

3.大分県の農産物

 大分県では、元平松守彦知事が提唱した、一村一品運動に力が注がれました。偶然、親戚の県庁職員木下さんが、各地の特産品を産み出す試みがスタートした時のメンバーで、40年前「ローカルにしてグローバル」を目標に掲げて日本全国に通用するブランドを産み出しています。
・農産物は日本一の生産量としての椎茸が特産品になっています。高級な冬菇(どんこ)は3㎝の直径で、身が厚く表に星形の亀裂が入っているものです。そしてカボスなどがあります。次に野菜では、白ネギ、小ネギ、トマト、イチジク、ナシ、ブドウ、ミカンなどの順です。
・水産業は中・高級魚介類が中心でブランドの魚として、関アジ、関サバ、城下カレイ、マグロ、ヒラメです。
・久住高原での酪農、牛乳、乳製品の加工品を作り、またブランド牛として豊後牛があります。

4.大分県の郷土料理

【1】粉食文化

かって田植えの朝は朝5時に起きてあぜ道から作り、7時に田植えがスタ-ト。
大分は米作りに適さない土地が多く、畑を基盤として麦などの穀物栽培が盛んで、穀物の大半を粉に挽いて、大分の粉食文化が開花したと言われています。
 団子汁(全県内:具だくさんのみそ汁に団子を入れる)
 やせうま(由布市:手延べ団子にきな粉や砂糖をかける)
 石拒もち(別府市)、酒まんじゅう(竹田市・豊後大野市)、ゆでもち(竹田市・豊後大野市)がおやつとして食べられていました。

【2】鶏料理

総務省の調査によると、鶏肉消費量が全国トップで、大分では鶏肉を使用しての「から揚げ」「とり天」が考案されて、皆に愛されて食べられてきました。各家庭で飼っていた時代、おもてなしや祝い事の時、鶏をつぶして、鶏料理を作っていました。
 鶏飯(大分市)、かしわ汁(由布市)、とり天(別府市・大分市:鶏肉をしょうゆ+生姜に漬けて天ぷらに揚げる)

【3】魚料理

別府湾エリアの佐賀関で水揚げされた。関アジ・サバ、城下カレイ(稀少なマコガレイ)の生物、煮物料理。真水が湧く特殊な環境で育ったため味は淡白で上品です。

【4】その他

 「黄飯・かやく」臼杵市に16世紀半に訪れた時に、宣教師が作ったというパエリアを思い出す料理。クチナシの実で着色した飯に豆腐、椎茸、人参、レンコン、ゴボウなどを炒めて、焼いたエツの魚と入れて煮た「かやく」と一緒に食べます。
大分の郷土料理は、大友宗麟がもたらした西洋の食文化と日本の郷土の文化が融合した料理で、先人が模索しながらあみ出した知恵が盛り込まれた料理なのです。

一陽来復の健康学:変異株が流行している現在の新型コロナウイルス感染症予防

 現在、新型コロナウイルス感染症が再び流行しつつあります。今年の春はアルファ株(イギリス株)、今の流行はデルタ株(インド株)が流行の主人公となっています。ウイルスは増殖してどんどん変異していきます。その結果、感染性の強いウイルス、増殖の速いウイルス、治療に抵抗するウイルスが増え、流行が拡大することになります。現在の流行はこの変異したデルタ株が原因となっています。ウイルスに対抗するためには、中和抗体を作って感染を防ぐ液性免疫、リンパ球によってウイルスの生体内での増殖を抑える細胞性免疫の2つの武器が有効です。細胞性免疫はウイルスの増殖を抑えることができるため感染しても重症化を抑えることができます。ワクチンは基本的に、医療従事者、65歳以上の高齢者、基礎疾患のある人、介護施設の従事者、60歳以上の人を優先的に接種することが重要です。
しかし、現在、これまで接種していたメッセンジャーRNAワクチンが日本で足らなくなりました。ワクチンには種類がいつくかあり、新型コロナウイルス感染以前のワクチンは、液性免疫だけが武器でした。しかし、今回新型コロナウイルス感染のために開発されたメッセンジャーRNAワクチンは液性免疫と細胞性免疫の2つの武器をもっているすぐれたワクチンです。ウイルスが変異すると、中和抗体によるウイルスへの攻撃力が低下するため、感染を防ぐ効果が減少し感染者が増えることになります。しかし、ウイルスが変異して感染が防ぐことができなくても、液性免疫でウイルスの増殖を抑えて重症化を抑制することができます。この働きができるのがメッセンジャーRNAワクチンです。そのため、変異したデルタ株が流行している現在の対策のかなめは、重症化率の高い高齢者での接種率をさらにあげる、若い世代は重症化が少ないので希望者に接種する、感染者がでればその周辺の人々を徹底的にPCR検査を行い、陽性者は隔離してそれ以上感染しないようにするなどが考えられます。ウイルスの変異は、いろいろな人々が集まると起こりやすくなります。そういう意味では、東京オリンピックで世界中から多くの人が日本にやってくるため、新しい変異したウイルスが日本で生まれる恐れもあります。私達ができることは、重症化しやすい条件を持っている人はできるだけワクチン接種をする、常に感染に気をつけマスク着用や手洗いの励行を続けることです。
**東京大学先端科学技術研究センター名誉教授の児玉龍彦氏の資料を参考にした。

健康一口メモ

  • 発酵食品は短期間に腸内環境をよくする

     クローン病や潰瘍性大腸炎など炎症性腸疾患が現代人で増加していますが、その原因はいまだ明らかにされていません。今回、高食物繊維を含む食事と発酵食品を含む食事を食べてもらい、炎症反応がどのように変化するのかを調べた米国の研究です。対象は36人の健康な成人で、1群(18人)は高食物繊維の食事、あと1群(18人)は発酵食品を含む食事を10週間にわたってたべてもらいました。その結果、発酵食品を摂取した群では、19種類の炎症性反応が低下しました。また腸内細菌の多様性も増加しました。炎症性反応の低下は、炎症性腸疾患を抑える作用がある可能性があります。また腸内細菌の多様性が増加したことは、生活習慣病予防の可能性を示します。一方、高食物繊維の食事をした群ではこのような変化がみられませんでした。10週間という短い期間では、高食物繊維の食事では腸内細菌へ影響するには短かったのではないかと考えられました。現代人は腸内細菌の多様性が低下し、炎症反応が増加していることを考えると、発酵食品を摂ることで、これらを短期化に改善できることが示唆されました。

    Cell https://doi.org/10.1016/j.cell.2021.06.019

  • 超加工食品はこどもを肥満にする

    超加工食品とは包装された焼き菓子やスナック、炭酸飲料や甘いシリアル、食品添加物の入った調理済み食品、再構成肉や水産加工品などの、高度に加工された食品をいいます。超加工食品は糖、塩分、飽和脂肪が多く、タンパク質、食物繊維、微量栄養素が少ない傾向にあります。これまで成人における超加工食品の摂取は、肥満、生活習慣病、死亡率のリスク上昇との関連性を示しました。しかし、こどもにおける超加工食品の摂取と長期的な脂肪率の変化との関連については明らかではありません。そこで幼少期から成人期初期にかけての超加工食品摂取と脂肪率との関連を検討した英国での報告です。対象は英国西部エイボン地域で1990年代初頭に生まれた9,025人で7-24歳になるまで追跡調査しました。超加工食品の消費量が最も多い群と最も少ない群を比較すると、肥満度、体重、ウエスト周囲長がより増加していることがわかりました。つまり肥満になりやすいということです。超加工食品の消費量が多いほど、幼少期から成人期初期にかけての脂肪率の増加が大きいことは、肥満を解消するためには、加工度の低い食品を奨励し、子供の超加工食品の消費を抑制することが必要です。

    JAMA Pediatr. June 14, 2021. doi:10.1001/jamapediatrics.2021.1573

  • 青魚のエイコサペンタエン酸(EPA)のサプリメントの服用時の注意

     青魚を食べると心臓病の予防になるといわれています。これは青魚にエイコサペンタエン酸(EPA)やドコサヘキサエン酸(DHA)などのオメガ3脂肪酸が含まれているからです。EPAやDHAは、中性脂肪の低下、血栓予防、抗炎症性、抗不整脈性など、さまざまな作用で心臓病を予防する効果があると考えられています。そのため、現在ではEPAやDHAのサプリメントが人気で、一緒に服用することがあります。しかし、EPAとDHAは脂質代謝に対する作用が異なるため、EPAの効果をDHAが抑制している可能性が指摘されています。そこで、EPAだけ服用した場合、EPA+DHAを服用した場合の心臓病予防の効果を多くの研究論文をまとめて考察した米国の報告です。研究論文を総合的に評価すると、EPA単独で服用した方が心臓病予防効果はEPA+DHA服用より大きいことがわかりました。これまでEPAとDHAを一緒に服用することが推奨されてきましたが、心臓病予防にはEPA単独で服用した方が予防効果が高いことが示唆されました。健康にいいサプリメントはなんでも取ればいいというわけではなさそうです。

    EClinicalMedicine https://doi.org/10.1016/j.eclinm.2021.100997