株式会社ツバメガスフロンティア

  1. ホーム
  2. 健康レシピ
  3. 2020年11月 晩秋の薬膳 韓国料理

2020年11月 晩秋の薬膳 韓国料理

目からウロコの調理学

晩晩秋の薬膳 韓国の美味しい辛味料理

はじめに
 新型コロナウィルス渦の中でも自然は止まることなく前進!秋は深まっています。
九州は紅葉シーズンを迎えています。日本人は桜の春の季節に続き、好きな季節が秋だそうです。
 気分をリフレッシュするために野山に出かけませんか。五感の中でも特に “目”視覚からまず嬉しい気持ちになるのではないでしょうか。私も糸島の山から挑戦しようかと思っています。

今月の晩晩秋の薬膳はやはり「辛味」で美味しい韓国料理を紹介します。
「健康日本21(第2次)」は平成25年度より10年間で高齢化の進展および疾病構造の変化を踏まえ,健康寿命の延伸を実現するための運動です。21 世紀の健康戦略の1つの特徴は,集団を対象とした健康管理から個人に合った健康管理に重点が置かれるようになりました。栄養に関しては、食文化のもつ広さ深さにより効果的な予防戦略は立てにくく、目標達成は厳しい状況ですが、ブレイクスルーできる候補の1 つとして薬膳があると信じています。中医学を基本にした薬膳は気候風土や個人の体質と食との関係を考えていく学問分野だと考えています。医療の分野テーラメイド医療が進められ、栄養学の分野でも遺伝的解析を行った上で科学的根拠に基づいた食事指導がなされています。

(1)韓国の宮廷料理

伝統食文化の始まりは朝鮮王朝の初代の王である李成桂時代です。
・都を開城から漢陽(ソウル)に移し、新しく儒教を基本とした政治を確立。
・儒教思想は、礼儀を重んじて、物事の手順や形式にこだわり、両班制度も確立。
・食生活においても儒教の考えが反映
・王の膳(御床):銀製の食器、はし、さじ、螺鈿と漆塗りの食床、白磁の皿、五感を満足させる宮廷料理
朝鮮王朝は男子が出生すると宮中に残り、王妃は民間の貴族から嫁ぎ、女子の王女は民間に嫁ぎます。結婚制度が宮中と民間の交流に大きな役割をはたし、伝統食文化の一つである宮廷料理は一般庶民まで波及していったといわれます。

1) 宮廷料理と十二チョブ飯床

宮廷料理が韓国料理の粋である理由は、各地方の食材が優れた調理技術を持つ厨房尚宮(調理担当の女官)と待令塾手(男性料理人)の手により調理され、最も整った形で伝承されたからです。
宮中での日常の食事である水刺床(御膳)では大型の円卓・小型の円卓・小型の角形の卓そしてコンロが準備されています。
基本の献立である十二チョブ飯床は原則として、一度に全部の料理が配膳,調理法と材料が重複しないようにするとなっています。
小さい器のチョブに12種類の料理・2種類の飯(白飯・赤飯)・3種類のキムチ・2種類の汁物・3種類の醤そして1 品の煮物を配置しています。

2) 宮廷料理の特徴

(1)各地方の特産物である穀物・海産物・肉類・野菜などが献上され、料理の種類も多いです。
(2)季節ごとの初物が宗廟に献上され、季節飲食と名節飲食(行事食)が発達しています。
(3)牛肉と椎茸は一緒に調理(一緒に食べると口あたりが良い)します。
(4)食材の最良部位を使用し、淡味で薄味です。強い香辛料や匂いの強い料理は作りません。
(5)五方色の青・白・赤・黒・黄を調和させて調理します。
 中医学基礎理論の陰陽五行学説が基本で五色と五味が調和しています(青:酸味、白:甘味、赤:苦味、黒:辛味、黄:鹹味)。宇宙の森羅万象と自然の法則に従い、五方色を具現化するために調理された薬食同源を基本としています。
(6)彩りを添える飾り(コミョン)は、味・色・形にも配慮します。自然の五色説に基づき作られ、食べる人への配慮と知恵が凝縮されています。赤色は唐辛子や大棗、青色は芹や葱、黒色は椎茸や木耳、白色は卵白の卵焼きや栗、黄色は卵黄の錦糸卵などを使用します。

3) 薬念と薬食同源

「薬念(ヤンニョム)」は、合わせ調味料や薬味のことで、料理の味を引き立てるために使用します。
薬のように体に役立つことを願って材料を合わせて作り、基本の味は鹹味・甘味・酸味・辛味・苦味の五味で、料理にこれらの調味料を混ぜ合わせて使用します。
薬念のベースは、塩・醤油・唐辛子味噌・味噌・酢・砂糖など、香辛料・薬味の働きをする生姜・芥子・胡椒・唐辛子・胡麻油・大豆油・胡麻・葱・大蒜・山椒などです。
味付けに使う醤は、塩辛い味の醤油と少し固めの味噌です。
 真醤:チンヂャン(濃く甘い醤油)
 清醤:チョンヂャン(味の薄い醤油)
 中醤:チュンヂャン(清醤と真醤の中間)
※色と塩分濃度を考慮して料理に使用します。
一つの料理には5、6 種類の薬念が使用され、複合的な味のハーモニーを楽しめます。「皇帝内経」は中医学の中医最古の医書。五味は五臓に入ると記載され、酸味は肝経、苦味は心経、甘味は脾経、辛味は肺経、鹹味は腎軽に入り、五味は味覚のみでなく臨床の症状によって分類します。五味がそろうと機能的にも優れた料理となります。

4) 韓国の薬膳研修

①全羅北道の全州ビビンバはビビンバの発祥の地であり、国の無形文化財で、白飯に唐辛子味噌と胡麻油を入れて炒めた飯で金属や陶器に入れます。
せん切りした牛肉に椎茸と擂り胡麻を入れたすき焼き味の炒め物、大豆モヤシ・人参・ぜんまい・トラジ・ほうれん草を各ナムル(フライパンに胡麻油を入れ各食材に塩胡椒して炒めたもの)、錦糸卵を色鮮やかに盛り付け中心に卵黄をのせる。胡麻油と唐辛子味噌は好みで添えて,よく混ぜて供します。
②ソウルでの韓国伝統食文化を学ぶ
1.宮中飲食研究院院長 韓福麗先生、韓福善先生
2.曹貞淳教授:韓国伝統食文化について(明知大学)
3.伊玉姫所長:宮廷料理(ソウル韓国料理文化研究所)
4.李釜鳳先生:菓子や餅(京畿道竜仁市の餅つくり体験村)
5.韓国茶と宮廷料理を試食(三清閣)
6.東アジア食生活学会の先生方と日・韓薬膳食文化交流。

おわりに
 11月から12月の晩秋にかけて、韓国では「オモニ(어머니)=母親」は家族のために1年分のキムチづくりをしてきたそうです。今回、皆様に私から、30年にわたり多くの友人・知人に学んだ韓国の美味しい辛味料理キムチと韓国家庭料理の味を紹介します。

目からウロコの健康学:新型コロナウイルスとインフルエンザに対抗するために

 世界の新型コロナウイルス感染者は4000万人を超え、死亡者数は100万人を突破し、世界的な流行が依然として続いています。新型コロナウイルスは主に接触感染と飛沫感染します。そこで私たちが日頃からできる予防策をコロナウイルスに関する研究報告などをもとに紹介したいと思います。

■マスク着用

マスクはウイルスを拡散したりや吸い込むことを抑制する効果が証明されています。そのため、うつさない、うつらないためには、全員がマスクをすることが重要です。またマスクを外すときは、マスク表面にはウイルスが付着している可能性があるため、ゴムヒモ部分だけを持って外し、そのまま表面には触れずに捨てることが大事です。

■頻繁に手の消毒

手や、人がよく触る紙幣、ドアノブ、手すり、テーブル、眼鏡などについたコロナウイルスは数時間から3週間程度感染力があります。そのためこれらを濃度70~80%のアルコールで消毒することが大事です。手は石鹸で洗ってもいいです。帰宅時はまず玄関で手の消毒をしましょう。また目や口などをむやみに手で触らないようにしましょう。

■三密(密集、密接、密閉)を避ける

ウイルスは唾液の飛沫に乗って拡散し、5分間の会話で生じる飛沫は約3000個といわれています。そのため、外出時はマスクをしていても、隣の人と2m程度あける、大きな声で会話をしない、換気のよい環境にいることを心掛けることが大事です。

■油断大敵

感染しやすいかどうかは年齢によって違いはなく、高齢者の特徴は感染したあとに重症化しやすいということです。そのため、若いから感染しにくいので予防策を取らなくてもいいと考えることは極めて危険です。若者が無症状の感染源となって流行を拡大させる危険性があるからです。

冬に向かって季節性のインフルエンザと新型コロナウイルスの同時流行の可能性が指摘されています。上記の内容は多くの人が既に聞かれていることでしょうが、この6か月間の医学的研究でその効果が実証されたものです。つまり感染症予防の基本は同じということです。これらの予防策は完全とはいえませんが、今できることをすることが大事です。

参考資料:日経Gooday、NHK新型コロナウイルス特設サイト

健康一口メモ

  • 立っているだけで健康になれる

     運動は健康に良く、ずっと座っていることは健康には悪いということは多くの人がご存知だと思います。では、立っていることは健康に良い影響があるのか、ないのか、このような疑問を検討した米国の研究報告です。対象者は、63歳から97歳までの5,878人のアメリカ人女性です。対象者には加速度計を1週間装着してもらい、彼女らが座ったり、立ったり、移動したりした時間を測定しました.。立っていた時間の長さから4つのグループに分けました。対象者はその後約5年間追跡しました。その結果、一番立っている時間が短かったグループと比較して、一番立っている時間が長かったグループ(立っていた時間は1日約90分間)は、その死亡率が37%も低い結果でした。また一番立っている時間が長かったグループの人の中でよく歩いいた人は、その死亡率が50%も低い結果でした。以上から、ただ立っているだけでも健康に良いことがわかり、さらに歩くことでより健康になれる可能性が示唆されました。1日30分間立っているだけでも、立っている時間が30分未満の人より死亡のリスクは低いこともわかりました。歩くことは高齢者にとって転倒して寝たきりの原因となることがありますが、立っているだけだとそんな危険性は少ないと思われます。現代人は動かないことが多くなっていますので、健康のためにはせめて1日30分間以上立つことを心がけましょう。

    The Journals of Gerontology: Series A, glaa227, https://doi.org/10.1093/gerona/glaa227

  • 食事の時の環境音は美味しさに影響する

     食事をするときに聞こえてくる音によって、食べ物の嗜好にどのような影響を及ぼすのかを検討したオーストラリアの研究です。音は次の4種類用意しました。リラックスできる音楽、道路交通の音、レストランで一般的に聞こえる音、そして最後は特別な音をださない状態(つまり通常の食事をする状態)。また音の大きさも3段階(30、40、50 dBA、数字が大きいほど音は大きく、30dBAは小さな音、40dBAは多少大きく聞こえる音、50 dBAはかなり大きく聞こえる音になります)準備しました。参加者は15人で、いろいろな音の種類と大きさを変えて食事を摂ってもらい、そのつど食べ物の嗜好をアンケートで評価しました。その結果、音が大きくなるほど、音の種類に関係なく食べ物の嗜好は低下しました。リラックスした音楽を聞いた場合は、通常の食事をする状態と比較して30および40 dBAのレベルでは、食べ物の嗜好は良くなりました。道路交通の音、レストランで一般的に聞こえる音は、通常の食事をする状態と比較して、音の大きさにかかわらず食べ物の嗜好を低下させました。つまり、食事をするときにリラックスできる音楽が流れていると食事は楽しく美味しい食事となるということです。人が感じる食べ物の味は単に食材自身の味だけでなく、むしろ食べている環境に大きく左右されることは以前から指摘されています。食事をするときは、心地よい音環境を心がけましょう。

    Applied Acoustics Volume 172, 15 January 2021,https://doi.org/10.1016/j.apacoust.2020.107600

  • 自然の風景の動画をみることで人は穏やかになる

     人間は自然環境のもとで進化してきたので、自然との関係がきちんと保たれていると前向きな感情を持つという研究報告があります。現在、新型コロナウイルスの感染流行でこれまでのような自然に触れ合う機会が減ってきています。そこで、自然の風景を録画し、屋内でそれをみることで人の感情にどのような影響を及ぼすのかを検討した英国の研究です。実験には成人のボランティア 96名に参加してもらいました。まず参加者に退屈な気分になるように、ある男性が事務用品会社での仕事について話し、デスクでの昼食、文房具の価格ついて説明するビデオを見せました(これで参加者は退屈を感じる状態となります)。次に参加者を3つのグループに分けて、水中のサンゴ礁の風景を体験してもらいました。①テレビで海の中の風景をみるグループ、②頭部にヘッドマウントディスプレイを装着して正面だけではなく上下左右360度海の中の画像がみられるグループ(あたかも自分が海の中にいるような感じ)、③頭部にヘッドマウントディスプレイを装着して、コンピュータで作成された海の中の画像をみたり、魚やサンゴと会話もできるグループ(この場合も360度みることができ、あたかも自分が海の中にいるような感じ)。動画をみた結果、3つのグループとも否定的な感情は抑えられ、退屈感も減らすことができました。またテレビをみたグループよりも、海の中で魚やサンゴとも会話できる③のグループは、自然をより強く感じるようになり、前向きな感情も増加していました。つまり、外出できず本物の自然に触れ合うことができなくても、自然の風景の動画をみることで人に自然とのつながりを感じさせ前向きな感情を起こさせる効果があることがわかりました。

    Journal of Environmental Psychology 72 (2020) https://doi.org/10.1016/j.jenvp.2020.101500