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2020年10月 秋の薬膳 晩秋の日本型薬膳-蒸し物

目からウロコの調理学

秋の日本型薬膳―蒸し物―

 10月は神無月と呼ばれています。全国の八百万の神様が出雲大社(島根県)に出向くので、神様が不在の月。しかし神々の留守は恵比須様が残り商売繁盛・五穀豊穣を祈ったと言われています。七福神の一神である恵比須様は福徳を授けると知られています。  やっと朝晩が涼しくなり秋の到来を感じますね。秋の高く澄みきった青空を眺めると、身も心も晴ればれします。そして秋風に吹かれ黄金の稲穂が波打ち、まさに豊饒(豊穣)で作物も豊かに実り、そろそろ収穫も間近です。  今月は、秋に収穫された旬の食材を使用した日本の伝統食を紹介します。ウィズコロナの中、是非挑戦して作ってみて下さい。分量は1人分で示しています。

1.主食は「赤飯」と新米で作る「吹き寄せおこわ」

赤飯:赤飯は日本のハレの日に欠かせない御祝いの一品です。古くから赤い食べ物は邪気を払う力があると考えられていました。古代米と言われ、赤米は神様に供える習慣がありました。民俗学者の柳田國男氏は赤飯の起源は赤米であると主張されています。
煮た小豆ともち米を蒸して作るおこわが赤飯です。小豆の吸水は良くないので、水に浸さないで煮ます。沸騰すると泡状のアクが出るので、茹でこぼしをします。これはサポニンで体にも良い抗酸化成分ですので一度でよいです。小豆の煮汁2回目は、米を蒸す時の振り水に使います。ポリフェノールを含み、空気を入れるように混ぜると、酸化されて赤くなります。これが赤飯の赤色にもなるのです。作り方はレシピを参考に。 胡麻塩:焙烙やフライパンで炒ります。黒胡麻:塩:道明寺粉=1:1:1
中村学園大学では、道明寺粉を炒って粉にして使います。塩分カットでヘルシー味。
南天:難を転じるという語呂合わせ。南天は縁起の良い木とも言われ、赤飯に添えられます。先人の経験や知恵が伺えます。
〈糸島市二丈 石崎の曲り田遺跡〉
昭和54年(1979年)発掘調査で、稲作開始時期を知る貴重な手掛かりとなった日本最古の稲作集落跡が糸島市二丈石崎にあります。
〈糸島 二丈赤米鑑賞〉
古代、大陸から伝わったという赤い稲穂「赤米」の産地として知られる糸島市の二丈町で、9月中旬に稲穂が染まる赤米を効果的に使って大きな図柄が描かれた田んぼのアートを楽しむ「二丈赤米鑑賞」が開催されます。二丈吉井から七山に入る七福街道沿いの赤米の田んぼは糸島の風物詩なのです。
吹き寄せおこわ:新米に秋の味覚である海の幸、山の幸を入れて炊き合わせると、味の相乗効果で食欲を出してくれる一品ができあがります。

2.汁物

御祝いや秋祭りに欠かせない鶏卵の卵液で作る茶碗蒸し。まさに秋の種実類である栗や銀杏は欠かせません。作り方はレシピをご参照ください。

3.副菜

2019年のインターネットリサーチで秋らしさを感じる食べ物3位の柿。皮を剝いて果物としてでなく、豆腐の白和えに是非使ってください。人参の代わりに使うと、調味料を入れなくても柿と胡麻と味噌だけで美味しい味付けができます。

4.菓子

茶人千利休が好んだことから命名された利休饅頭を紹介します。40年前に小倉表千家亀井民子先生の茶会のお手伝いをした時に習ったレシピです。しかし、10年前に奄美大島の西歯科院の奥様が作ってくれた大島まんじゅうと同じ味で本当に美味です。利休様は黒糖まんじゅうを好んだんですね。

【蒸し物】

食品に熱を加えて種々の変化を起こさせる。それは、食べ物を好ましい状態にするためです。加熱の目的は美味しく食べられる状態にするため、食品の体内での消化吸収を高めるため、食品衛生的に安全な状態にするためなのです。
「蒸す」は、水を沸騰させ発生した水蒸気の熱を媒体として食品を加熱する操作です。水蒸気が食品に触れると食品の表面で液化して加熱する。つまり潜熱を利用して食品は加熱される。(水蒸気の潜熱540kcal/g)蒸気の対流で加熱される。

1.蒸す目的と調理例

・膨化させる(まんじゅう・蒸しパン)
  表面の割れ目を防ぐには低温から高温にする。
・卵液をゲル化する(卵豆腐・茶碗蒸し)
85~90℃の範囲で蒸す。
高温にすると“す”が入って見た目に悪い。
蒸し器にお箸を1本入れて、蒸気を抜くとよい。卵液の最初の凝固開始温度手前の60℃程度に予備加熱しておくと“す”が入りにくい。
・食品の脂肪を溶出させる
うなぎの油抜き、東坡肉の脂抜き。
・でんぷん性食品を糊化させる(赤飯・さつまいも)
強火で蒸す、。高温で振り水をして水分を補給する。

1.蒸し方の要点

①もち米の水分含量は約15%。蒸し上げるためには3回ほど振り水をして、でん粉の糊化に必要な水の補給をする。
②茶わん蒸しなど卵の希釈液の料理。卵液の凝固温度は78~80℃なので、蒸し器内の温度は85~90℃に保つため、火力の調節、鍋のフタをずらして温度調節(お箸を1本入れて中弱で加熱)。
泡立てぬように混ぜる事、泡が残って蒸すと表面に穴が残る。内部まで凝固したら、竹串をさして穴から透明な液体が出る。

2.蒸し方の要点

①もち米の水分含量は約15%。蒸し上げるためには3回ほど振り水をして、でん粉の糊化に必要な水の補給をする。
②茶わん蒸しなど卵の希釈液の料理。卵液の凝固温度は78~80℃なので、蒸し器内の温度は85~90℃に保つため、火力の調節、鍋のフタをずらして温度調節(お箸を1本入れて中弱で加熱)。泡立てぬように混ぜる事、泡が残って蒸すと表面に穴が残る。内部まで凝固したら、竹串をさして穴から透明な液体が出る。

【皆敷の折り方】

皿の上に敷く

目からウロコの健康学:大豆と植物性たんぱく質

 2050年に世界の人口は98億人に達すると試算されています。これほどの人口が地球上で生存するために必要とされるたんぱく質量は現在の2倍に跳ね上がり、とても肉などの動物性たんぱく質でまかなえる量ではないと予測されています。人類生存と地球環境を守るためには、莫大なたんぱく質量をどのように確保するのか、重大な食糧問題となっています。その解決策の1つは主なたんぱく質源を動物性たんぱく質から植物性たんぱく質に変えることです。世界では、代替肉の研究が急ピッチで実施されており、肉の代わりとしてエンドウ豆から抽出した植物性たんぱく質で作ったハンバーガー用のパテイが米国で開発され、それを使ったハンバーガーがすでに売り出されています。日本でも今年、大豆由来のパテイを使ったハンバーガーが販売されました。このような植物性たんぱく質を使った食ビジネスの潮流は、肉消費量が多い欧米で盛んです。日本では今から約1300年前の飛鳥時代に肉食禁止令が公布され、その影響で肉食が解禁になる明治時代まで、肉食の食習慣はほとんどありませんでした。明治になり肉食が奨励されるようになりましたが、現在まで先進国の中では肉の摂取量は最も低い国となっています。世界がたんぱく質源を植物性たんぱく質へ移行する中で、日本ははるか遠い昔から大豆由来の植物性たんぱく質を中心とした伝統食文化が脈々と受け継がれてきました。味噌、醤油、納豆、豆腐、おからなどの大豆加工食品が日本人の命を長い間支えてきたわけです。そのおかげで、大豆に含まれる成分を腸管内で代謝して健康増進作用のある有効成分に変化させる腸内細菌が世界で最も多い民族となっています。味噌汁は海藻、野菜、きのこなどの具材を入れるため、食物繊維が最も摂取できる健康メニューです。塩分が多いと心配されるかもしれませんが、相当塩辛い味噌汁でないかぎり、具材が塩分の害を打ち消してくれます。大豆は今でも日本人にとってスーパーフード(栄養バランスにすぐれ、栄養価が高い食品)なのです。

健康一口メモ

  • 肉は焼くより煮る方が健康的

     血糖が過剰になると、体の細胞や組織を作っているたんぱく質に糖が結びつき、終末糖化産物という物質ができます。この物質は糖尿病合併症、がん、心臓病、アルツハイマー病などさまざまな病気への関与が指摘されています。実は食品中にも終末糖化産物は含まれています。また調理で焼いたり、揚げたりすると終末糖化産物はできます。そこで、焼き肉を食べると、血液中の終末糖化産物が増加するかどうかを検討したオーストラリアと韓国からの報告です。対象者は糖尿病のない51人(平均年齢35.1歳、男性15人で女性36人)で2群に分け、1群は赤肉と加工肉と精製穀物を多く含む食事(A食事)を4週間、他の1群は全粒穀物、乳製品、ナッツ、豆類を多く含む食事(B食事)を4週間摂取しました。次に2つの群の食事を入れ替えてやはり4週間摂取しました。2種類の食事を摂取する前後で、血液中の終末糖化産物を測定しこの物質が増加するかどうかを比較しました。その結果、A食事を食べたあとの血液中の終末糖化産物はB食事を食べたあとの終末糖化産物に比べ、有意に高い値を示しました。この結果、焼き肉は終末糖化産物が増加し生活習慣病を起こしやすい可能性が示唆されました。肉を頻繁に食べる場合は、終末糖化産物が増加しやすい焼くや揚げるなどの調理法だけでなく、煮る、蒸すなどの調理法も取り入れた方がいいと思われます。

    Nutrients 2020, 12, 1767; doi:10.3390/nu12061767

  • 健康的でかつ環境にやさしい食事が長寿につながる

     英国には健康的に食事をしてバランスの取れた食生活を送るために政府が推奨した指針があります。それをEatwell Guideといいます。そこには、健康的な食生活を送るための9つの食事のヒントが用意されています。その内容は、①砂糖は控えめ、②適切な摂取エネルギー量、③飽和脂肪酸は控えめ、④食塩は控えめ、⑤たくさんの食物繊維、⑥たくさんの果物や野菜、⑦青魚、⑧他の魚、⑨赤肉・加工肉は控えめの9項目です。9項目をどのくらい日常の食生活で実施しているかで、「非常に低い」(0~2個実施している群)、「低い」(3~4個実施している群)、「中高」(5~9個実施している群)の3群に分けて、死亡リスクを検討したところ、「非常に低い」群に比べ、「低いまたは中高」の群は7%死亡リスクが低い結果でした。また、たくさんの果物や野菜を摂取している人は、そうでない人に比べ死亡リスクが10%低い結果を示しました。さらに、9つの食事ヒントを守っている人は、そうでない人に比べ、温室効果ガスの排出量をより削減できる食生活を送っていることもわかりました。つまり、健康的な食生活は地球にもやさしい食生活ということが明らかとなりました。これからは自分の健康とともに、地球の健康も守る食事をしていけば長寿につながると思われます。

    BMJ Open 2020;10:e037554. doi:10.1136/bmjopen-2020-037554

  • 眼鏡は新型コロナウイルスの感染を予防する

     新型コロナウイルスの感染が始まった中国で、入院患者には眼鏡をかけていない人が多いということに気付いて、眼鏡をかけていると感染予防になるのかどうかを検討した中国からの報告です。対象者は、2020年1月27日から3月13日まで、新型コロナウイルスの感染で蘇州病院に入院した患者276名です。眼鏡を毎日8時間以上着用している人を眼鏡をかけている人としました。1日8時間以上眼鏡をかけた人は276人の患者のうち16人(5.8%)で全員近視の人でした。一方、蘇州のある湖北省の近視の割合は31.5%で、新型コロナウイルス感染入院患者の近視の割合よりもはるかに高い結果でした。近視の人のほとんどは眼鏡をかけると考えられるため、新型コロナウイルス感染で入院した患者の眼鏡着用率は、一般人の眼鏡着用率に比べ、約5分の1と推測されました。新型コロナウイルス感染は、主に飛沫と接触を介して感染することが明らかになっているため、汚染された手で目を頻回に触ると新型コロナウイルス感染のリスクが高まると考えられます。しかし、眼鏡をかけていると手で目を直接触る行為が減ることで感染リスクが低下する可能性があります。これまで感染予防にはマスク着用や人と人の距離を2mあけることが重要といわれてきましたが、目を触らないようにすることも有効な予防策と考えられます。

    JAMA Ophthalmol. doi:10.1001/jamaophthalmol.2020.3906