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2019年9月 秋の薬膳 なつめ料理

大棗=なつめ

9月の食材は、なつめの成熟した果実です。5月頃には淡緑色の小さな花が咲き、9月になると楕円形の果物になります。淡い緑色から少し暗めの赤色となり乾燥させたのが紅棗、それをさらに蒸して乾燥させたのが大棗です。 中国では古くから「五果」の一つとして桃、李、杏、栗と一緒に大事に美味しく食べられてきた果物です。栄養的には、日本人に不足している食物繊維が豊富に含まれており、カリウム、カルシウム、マグネシウム、リンなどのミネラル類、そしてビタミンB群や葉酸も含んでいます。味が甘味を持つことから、苦味のある中国の中薬や食療中薬と組み合わせて使われています。 中国、上海中医薬大学にテーラーメイド栄養学である中医学を基本とした薬膳を学ぶために留学しました。ある秋の日、市場で出会った日本の姫りんごのように赤く丸くかわいい果物である大棗は、甘酸っぱくて美味しく、中国の人達は大好きで1日に3~5個食べると健康になると言われ、継続して食べていました。
中医学基礎理論を基本にした中国の薬膳、インドの伝統医学のアーイルウェーダにおいても大棗は使われており、韓国において紅い縁起の良い食べ物は、五色の中の赤として大事に献立の中で使われ、健康作りの食材として重宝されています。そして、なによりも大棗は、健康保持増進のためのアジアの料理には不可欠な食材なのです。
薬膳の考え方では、補益作用があり、性味は甘・湿です。身体内の血液や体液・精気の不足を補って脾・胃を健康にすると言われています。また養血安神作用もあり、高齢者の病後の虚弱やまた食欲不振の時に食べると良いとされ、「1日大棗3個を食べていると決して老いることはない」という諺もあります。
今回、飯物、汁物、主菜、副菜の料理に大棗を使って紹介しました。
粥に入れ、毎日食べることで継続、持続でき、健康に寄与すると思われます。

日本の薬草と健康:ナツメ

 ナツメは日本人にはあまり馴染みがないでしょう。しかし、隣の韓国、中国ではよくみかける食材です。中国では400以上の品種が知られているようです。果実をそのまま食したり、煮たり蒸したりなど火を通してから乾燥加工して用います。ナツメは多くの漢方薬の中に入っている生薬でもあることからわかるように、その薬効はすばらしいものが期待されます。皆さんご存知の風邪の漢方薬である葛根湯には、ナツメ、生姜 や桂皮、甘味料の甘草、くず粉の原料の葛根、そして麻黄や芍薬が入っています。このうち、麻黄や芍薬は漢方薬ですが、ナツメを始めあとのものは漢方薬であり、かつ食材としても使われているものです。ナツメの効能としては、強壮作用、利尿作用、鎮痛作用があり、筋肉の緊張による疼痛、咳嗽、腹痛などに用いられます。皆さんご存知の韓国の滋養強壮の料理として有名なサムゲタン(参鶏湯)は鶏を丸のまま、その腹の部分にもち米やニンニク、松の実や、クコの実などを詰めてじっくり煮つめます。このサムゲタンにナツメが使われています。ナツメの不思議な効能として甘麦大棗湯という漢方薬があります。大棗とはナツメのことで、あと甘草と小麦の3つで構成されている漢方薬です。この漢方薬は,精神興奮がはなはだしく、不安、不眠、夜泣き、ひきつけ、ヒステリーなどがある場合に用いられます。現代科学の解析によれば、甘麦大棗湯は抗うつ剤とよく似ている構造をとっているようです。ナツメ、甘草、小麦とそれぞれは普通の食材ですが、3つが一緒になると不思議な効能を持ちます。食事もいろいろな食材を同時に取ることで、私達が思いもかけない健康効果をもたらしているかもしれません。

  • 卵は認知症予防にいいかも

     コリンという成分は、脳神経の神経伝達物質の形成に必要なもので、ホスファチジルコリンの構成成分の1つです。このホスファチジルコリンが認知症予防や記憶力維持に有効ではないかというフィンランドの研究です。対象者は42歳から60歳までの2,497名の人で、このうち482名には認知機能検査も行いました。4日間の食生活調査も実施し、食事からのホスファチジルコリン摂取量を評価しました。調査は1984年から開始され22年間追跡し、337名の人が認知症の発症がみられました。そこで、ホスファチジルコリン摂取量と認知症発症の関連を検討すると、食事から摂取するホスファチジルコリンの量を4群に分け、一番多い群(H群)は一番少ない群(L群)に比べ、認知症発症率は28%低いことがわかりました。また認知検査でも、H群はL群に比べ高い記憶力がありました。食品100g中のホスファチジルコリンの含有量は卵が240mgと最も高く、牛肉や豚肉、枝豆にも50mgから80mg程度含まれています。卵にはコレステロールも多いのですが、1日1個程度食べても血清コレステロールは高くならないことが判明していますので、認知症予防に1日1個の卵はいいかもしれません。

    The American Journal of Clinical Nutrition, https://doi.org/10.1093/ajcn/nqz148

  • 肥満でなくても摂取カロリーは少ない方がいい

     今食べている食事のカロリーの1割でも減らすと、健康状態がさらに良くなるという米国の研究です。対象は21から50歳の218名(肥満指数は22.0-27.9 kg/m2)の成人で、無作為に2つのグループに分けました。1つのグループ(A群)は今の食事のカロリーを25%減少させる食事を取ってもらいます。あと1つのグループ(B群)は今まで通りの食事です。これを2年間継続してもらい、この2年間で血圧、血清コレステロール、炎症反応など心臓病の危険因子の変化を検討しました。その結果、A群は最終的には1日の食事の摂取カロリーは約12%減少し、B群は約1%の減少でした。体重は、A群で7.1kg減少、B群で0.1kg増加しました。危険因子においては、血清コレステロール、収縮期血圧、拡張期血圧ともA群はB群に比べ有意に改善しました。さらに、炎症反応や糖代謝もA群の方が有意に改善がみられました。これは米国の調査なので、1日約3,000kcalの食事を取っていると思われますので12%の摂取カロリー減少は約300kcalに相当します。日本人に当てはめると1日2,000kcalが1,800kcalになると考えられます。よく腹八分目がいいといわれますが、この研究から腹九分目でも健康になると思われます。

    The Lancet Diabetes & Endocrinology https://doi.org/10.1016/S2213-8587(19)30151-2

  • よく眠れるための入浴法

     ヒトの体温は睡眠/覚醒サイクルと関係しており、寝る1時間くらい前に身体の深部体温は約0.3~0.6度ほど低下し、夜間の睡眠中の中頃から後半になると最低になります。寝るにはまず深部体温の低下が必要で、体温を下げて睡眠を促します。お風呂に入ると体温調節システムを刺激し、体の中心から四肢への血液循環を増加させ、体熱を放散して体温の低下が起こります。体温が低下することで、睡眠の準備ができるというわけです。入浴と睡眠への影響について5,322件の研究を検討して、どのような入浴が睡眠の質をあげるのかを探った米国の研究です。その結果、睡眠の質を改善するために深部体温を下げるための入浴の最適なタイミングは、就寝の約1時間から2時間前であることがわかりました。また約40~42.7度での入浴が全体的な睡眠の質を改善する最適温度でした。入浴温度には個人差がありますが、熱い風呂が苦手な人は40度、熱い風呂が好きな人は42度がいいようです。

    Sleep Medicine Reviews Volume 46, August 2019, Pages 124-135