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2019年8月 夏の薬膳 桑の葉料理

桑の葉

日本の近代化に貢献した一つに製糸業があります。生まれ育ったF県の上毛町の家にも桑が植えられており、蚕が食べる「桑」の茂る光景は戦後生まれの私も見たことがあります。蔵には織機も数台ありました。古びた織機は中津市に寄贈すると母が言っていたことも思い出します。だから「桑」といえば蚕が食べる植物と思っていました。そして、「桑」といえば、童謡の一つである赤とんぼの歌詞が思い出されるのです。♪夕焼け小焼けの赤とんぼ負われて見たのはいつの日か、山の畑の桑の実を小籠につんだはまぼろしか…。小学校2年生の時に見た映画「ここに泉あり」で流れていた歌、それが赤とんぼであったことを母から最近聞きました。桑の実は食べられるものであることをこの歌詞からを知ったのです。一方、中国の中医学を基本とした薬膳では、桑の葉は「柔葉」といい、桑の果実は「桑椹子」で、性味は甘、寒、帰経は腎の作用があり個々人の体質と合わせて配合されます。桑の生の果実は少し甘酸っぱい味なので、ジャムにしたり、焼酎に漬けて桑の実酒にすることで日常美味しくいただけます。またドライフルーツやレーズンのようにパンケーキやグラノーラの具としても美味しく食べられます。栄養的には有機酸、ビタミン、ミネラルを含んでいます。

桑の葉を使用した美味しいお茶の作り方を紹介します。


  • ①桑の葉を水でよく洗い、数十枚ずつ糸を通す。

  • ②沸騰したお湯に糸を通した葉を10秒間つけ、水にとり、すぐに水からあげる。

  • ③水気をよく拭きとり、3㎝幅にはさみで切る。

  • ④中華鍋に③を入れてターナーと手で焦げないよう炒る。

  • ⑤新聞紙の上に広げて風乾する。(噛んだ時にパリッとしたらビニール袋に入れ冷蔵庫で保存する。水分は約5%程度になる)

桑の葉茶を抽出して料理に応用しました。今回は日常簡単に継続して毎日食べることが可能な料理に桑の実と桑の茶の浸出液を入れてメニュー開発をしました。桑の葉茶ご飯、かぼちゃの煮物、桑の実とチキンの夏スープ、豚肉と夏野菜の桑の実炒め、桑の実ときゅうりの酢の物そして夏の果実を添えました。

日本の薬草と健康:クワ

 クワの葉は絹糸をとるための製糸業で重要な役割を担った来ました。カイコを育てる養蚕業で多くのクワが栽培されていました。クワの名前の由来は蚕葉(コハ)または食葉(クハ)などからきたといわれ、カイコだけでなく、クワの新芽や若葉は天ぷらとして食されてきたようです。実はクワの根皮は「桑白皮」といい漢方薬として、昔から鎮咳、去痰、消炎性利尿薬などで使われています。民間療法では葉を乾燥させてお茶にしたり、実を乾燥させてそれを食べていました。最近の研究では、デオキシノジリマイシンという生理活性物質が多く含まれていることがわかっています。人を対象にした研究によると、食後の血糖上昇を抑える働きがあることが報告され、糖尿病予防として期待されています。沖縄県浦添市では、5月~10月に養蚕がおこなわれているため、夏場にはクワの葉が大量に余り、その有効利用でクワの葉の茶を町おこしの農産物として産学官連携事業で商品化しています。沖縄県は身体にいいものを食べて健康を保持するという薬食同源の考え方である「クスイムン」という食文化が根付いています。県内には薬草が200種類以上あり、科学的な研究でその健康効果も実証されているものが少なくありません。身近なものをあらためて見つめなおすことが大切かもしれません。

  • 宇宙時代にむけて

     長期間の無重力状態で人間の筋肉量や筋力を維持するのは難しいことです。火星に行くには9ヵ月間もかかるため、この期間いかにして筋肉を鍛えるかが宇宙時代の大きな健康問題となっています。そこで、無重力の中でどのような栄養素を摂取すれば筋肉量を維持できるのか動物を使って実験した米国の研究報告です。実験内容は、1つのグループでは重力がかからない仕掛けとして、ロッククライミングなどで用いる安全ベルトのハーネスを動物に取り付け、天井から2週間つるしました。一方、もう1つのグループはハーネスでつるさずそのままの状態で飼育しました。そして、それぞれのグループに、ポリフェノールの一種であるレスベラトロールを与えた群と与えなかった群を作り、計4群(A群:ハーネスあり+レスベラトロールなし、B群:ハーネスあり+レスベラトロールあり、C群:ハーネスなし+レスベラトロールあり、D群:ハーネスなし+レスベラトロールなし)の動物の筋肉の変化を検討しました。その結果、A群の筋肉量が最も低下しました。しかし、B群はD群と同じ筋肉量でした。以上から、宇宙旅行にレスベラトロールが役立つ日がくるかもしれません。

    Front. Physiol., 18 July 2019| https://doi.org/10.3389/fphys.2019.00899

  • 究極の老化防止?

     ヒトの腸内には約1000種類、約100兆個の腸内細菌が生息し、人の健康に貢献しています。、腸内細菌が中枢神経系や循環器系、代謝系、免疫系などさまざまな病気と関連していることが最近の研究で明らかになってきました。その中で今回ご紹介するのは、老化とともに免疫力が落ちてきますが、腸内細菌によって若い人と同じような免疫力が付くという英国の動物実験の報告です。高齢のマウスでは腸管の免疫系の機能の低下が起こりますが、ここで若い世代のマウスの健康な糞便を高齢マウスに移植すると、低下した免疫系がよみがえることがわかりました。つまり、高齢の免疫系は老化とともに、もう若い世代のときのように元気にならないと思われていましたが、腸内細菌を入れ替えると、免疫系そのものが元気づくということです。現在は腸の難治性疾患に糞便移植が行われていますが、将来的には若返りのために若い人の糞便を移植することで、若さをとりもどすことができるかもしれません。現時点では食物繊維の多い海藻、野菜、キノコ、芋などをとることで、腸内細菌の種類が多くなり、腸内環境が良くなることがわかっていますので、できるだけ食物繊維を毎日取ることが大切です。

    Nature Communications volume 10, Article number: 2443 (2019)

  • 認知症予防因子

     国の推計では2020年に65歳以上の認知症患者数が約600万人、2025年には約700万人、2050年には1000万人になるといわれています。そのため、その予防対策が重要となってきますが、英国から認知症の発症リスクを高める要因が報告されていますので、その内容をご紹介します。そのリスク要因とは、「高血圧」、「肥満」、「難聴」、「喫煙」、「抑うつ」、「運動不足」、「社会的孤立」、「糖尿病」、「低学歴」の9つです。この中で、「高血圧」、「肥満」、「難聴」は中高年期に注意する要因です。これらの要因がある人はない人に比べ、1.6~1.9倍も認知症リスクが高くなります。「喫煙」、「抑うつ」、「運動不足」、「社会的孤立」、「糖尿病」は高齢期に注意する要因です。これらの要因がある人はない人に比べ、1.4~1.9倍も認知症リスクが高くなります。要因をみるとその多くが生活習慣に関連しています。そのため、禁煙、運動、バランスの良い食事、ストレスをためないなどを心がけることが、認知症の予防に重要のようです。

    Lancet. 2017 Jul 19. pii: S0140-6736(17)31363-6. doi: 10.1016/S0140-6736(17)31363-6.