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2019年1月 冬の薬膳 ドイツ料理

ドイツ料理の特徴

 ドイツの料理は、風土的に食材が豊富といえない。そのため美味しい料理を作るための工夫がなされている。特に冬は作物が少ないため、各家庭の食卓にはソーセージとザウアークラウト(酸敗キャベツ)が登場して、大ジョッキのビールを傾けながら次に出されるザウアーブラーテン(酢漬け牛肉のロースト)やじゃがいもだんごに舌鼓する。
古い歴史をもつザウアークラウトはキャベツの育つ地域において作られ、料理に添えられドイツ料理の花形といわれている。ザウアークラウトの作り方は東洋から古代ローマに伝わったといわれているが、作り方や味付け方法は変わらず、きざんだキャベツに塩を加え、発酵させ調理する。タタールの遊牧民が中国の製法として、オーストリア地方に広めてオーストリアの人々がザウアークラウトを「酸っぱい野菜」と名づけたが、歓迎しているのはドイツ人である。そしてドイツ料理の特徴はじゃがいもをよく使い、カルトッフェル・クレーセ(じゃがいものだんご)やカルトッフェル・ズッペ(じゃがいものポタージュ)などは代表的な料理である。じゃがいもは魚や肉料理の付け合わせにも添えられている。ドイツ料理のメインディッシュは肉料理で、牛肉や豚肉をオーブンで焼いたり鍋に少し汁を入れて蒸し焼きすることもある。鶏肉やガチョウはビールやぶどう酒を入れて蒸し煮したり、りんごやプラムを詰めて焼いた豪勢な料理もある。
ドイツのクリスマスは古風で郷愁をかきたててくれる。クリスマスイブの晩は、美しく飾られたクリスマス・ツリーのそばに幼児キリストがプレゼントを持ってくるといわれてきた。ドイツのクリスマス料理は栗やりんごやたまねぎを詰めたり、ウサギやガチョウのローストが主役である。そしてクリスマスの菓子は家庭でケーキやクッキーを手作りする。代表的なものに香草を入れたクローブ、オールスパイス、シナモン、蜂蜜入りのクッキーやドレスデン風果物入りクリスマス用パンであるシュトレンなどがある。
今回は、前(株)千鳥屋ファクトリー代表取締役社長 原田光博様とドイツ出身の奥様ウルズラ様に学んだ家庭のドイツ料理を、そして、1964年東京オリンピック選手村の総料理長であった馬場久先生(前中村学園大学特別調理講師)にご指導いただいたシュトーレンを、それぞれご紹介いたしました。

世界の郷土料理と健康:ドイツ編

 ドイツ料理といえば、肉の煮込み料理、ソーセージ、ジビエ、ジャガイモ料理、そしてビールなどが思い浮かびますが、ドイツは代替医療がさかんな国で、ハーブなども医療に積極的に取り入れられています。日常の食事にもハーブが活用されています。昨年、修道院の料理としてドイツのベネディクト修道女ヒルデガルト・ファン・ビンゲン(1098年~1179年)の料理がドイツで復活していることが紹介され話題になりました。ヒルデガルトは医学者であるとともに薬草学者で、ハーブテイ、ワイン、シロップ、オイル、軟膏、ハーブ料理などを使ってさまざまな病気を治したといわれています。(表参照)

彼女の治療は食事療法が中心で、彼女が残した本にはアロエ、オレガノ、柿の葉、パセリ、クレソン、アーモンド、フェンネル、デイル、ガーリック、シナモン、クミン、クローブなど、現在でも食品やハーブとして使用されているものが記載されています。ドイツは食物繊維が多いライ麦パンが有名ですが、ヒルデガルトはパン小麦の原種にあたるスペルト小麦が健康増進に優れているといっています。スペルト小麦の栄養成分としては、必須アミノ酸、ビタミン類、ミネラル類の宝庫で食物繊維も豊富に含まれており、日本でも手に入ります。医療が発達していなかった中世ではハーブ療法は重要な治療法ではなかったかと思われます。現在、これらの治療法は現代医学的にも検討されており、今後もハーブの未知な力が解き明かされていくでしょう。
(参考文献:ヒルデガルトのハーブ療法、フレグランスジャーナル社、2010)

  • 脳の健康に食物繊維

     食物繊維をとると、腸管内で酪酸や酢酸など短鎖脂肪酸といわれる脂肪酸を腸内細菌が産生します。この短鎖脂肪酸は生活習慣病予防をはじめ、うつ病など精神疾患にも関与していると考えられています。今回食物繊維と認知症に関係している脳の炎症との関連を動物実験で検討した米国での研究です。老年マウスと若年マウスのそれぞれの群に低繊維食または高繊維食を与え、血中の短鎖脂肪酸濃度や腸の炎症度合を測定しました。その結果、高繊維食を与えた場合は老年マウス、若年マウスともに血中の短鎖脂肪酸の濃度は高くなり、腸の炎症は抑えられました。さらに、認知症と関連ある物質の産生も抑えられました。ところが、低繊維食を与えた場合は老年マウスだけが腸に炎症が見られました。このことは、高齢者は食物繊維をよく取ることで認知症に関連ある物質の産生が抑えられ、認知症を予防する可能性を物語っています。現在日本人の1日あたりの食物繊維摂取量は約15g。目標量は約20g。もっと食物繊維をとることを心がけることが大切です。

    Front. Immunol., 14 August 2018 | https://doi.org/10.3389/fimmu.2018.01832

  • 低タンパク質、高炭水化物の食事は脳の健康によい

     高齢になっても脳の健康状態を守る、つまり認知症にならないようにするには、カロリーを制限した食事をとることは以前からいわれていました。しかし、飽食の現代社会ではカロリーを制限することはなかなか大変です。そこで、低たんぱく質、高炭水化物の食事が脳の健康にどのような影響を示すのかを動物実験で検討したオーストラリアの研究です。結果は低たんぱく質、高炭水化物食は、カロリー制限と同じくらい脳の健康を保つ効果があることがわかりました。実は、低たんぱく質、高炭水化物食は長寿の沖縄県の伝統料理や地中海沿岸の料理の栄養構成と同じです。沖縄では高炭水化物としてサツマイモを食べており、サツマイモには食物繊維がたくさん含まれています。地中海料理はすでに認知症予防の効果があることが実証されています。脳の健康にはこれらの郷土料理がよさそうです。

    Cell Reports 25, 2234–2243, November 20, 2018

  • 高齢になっても高血圧にならない方法

     南米で外部と孤立して暮らすヤノマミ族72名の血圧と、同じ地域で外部と交流があり食事も変化している近隣のイェクワナ族83名の血圧を調べた米国の研究です。ヤノマミ族は、ブラジル北部とベネズエラ南部の隔絶した熱帯雨林地域に住み、狩猟採取と農耕生活を送っている部族です。彼らの食事は脂肪と塩分が少なく、果物と食物繊維が多い食事となっています。このヤノマミ族では1歳から60歳まで血圧は増加していないことがわかりました。一方、加工食品や塩分含有食品を取っている近隣のイェクワナ族では若い頃に比べ中年後期になると血圧が増加していました。先進国では加齢とともに血圧は増加していき、血圧上昇は加齢現象と考えられてきました。しかし、ヤノマミ族の血圧の状況をみると、食事によっては血圧は加齢とともに増加しないことがわかります。ヤノマミ族は動脈硬化や肥満もないことが判明しており、低脂肪、高食物繊維の食事はアンチエイジングによさそうです。

    JAMA Cardiol. November 14, 2018. doi:10.1001/jamacardio.2018.3676