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2022年1月 冬の薬膳 北海道の郷土食

目からウロコの調理学

謹んで新春をお祝い申し上げます。
2022年も皆様がご健勝、ご多幸でありますよう心からお祈り申し上げます。
1月の薬膳は、日本で最も極寒の地である北海道の郷土料理を紹介いたします。この時期の北海道は、1日を通して0度を上回る日はほとんどないとの事です。北海道に住む長女の三成有香から今月の情報の一部を提供してもらいました。

(1)北海道とは

周囲を太平洋、日本海、オホーツク海の三海に囲まれる北海道は、約7割を森林面積が占める自然環境が豊かな大地です。明治2年に「蝦夷地」から「北海道」に改称された後、本格的な開発が進んでいきました。
主な産業は、十勝平野でとれるジャガイモなどの「畑作」、石狩・上川地方の「稲作」、根釧台地を中心とした「酪農業」、函館や根室、釧路、オホーツク沿岸などを中心とした「漁業」です。また、苫小牧から札幌にかけては食品加工・紙パルプ製造業などの「工業」も盛んです。
北海道は、元々アイヌの人々が生活していた地に後から外の人々が入って来ていますので、北海道の郷土料理といえばアイヌの人々の料理といえます。

(2)アイヌ民族

北海道には、もともと先住民族の「アイヌ民族」が暮らしており、「和人」とは異なる言語や宗教観を持ち、固有の文化を発展させてきました。アイヌ民族は、その伝統的な暮らしの中で、山では狩猟をし、春にはギョウジャニンニクなどの山菜、夏にはオオウバユリ、秋にはヤマブドウなどを採集し、畑で穀物や野菜を作る地域もありました。秋に川をのぼってくるサケは、特に重要な食料でした。現代のアイヌ民族は、時代に合わせて多様な生活を営んでいます。
令和2年7月に、北海道白老郡白老町に「ウポポイ(民族共生象徴空間)」というアイヌ民族について総合的に学習できる国立アイヌ文化施設がオープンしました。私も実際に訪問させてもらいましたが、博物館をはじめ、体験施設や伝統的住居の展示などがありました。これまで知り得なかったアイヌ民族の様々な歴史を知ることができ、また、アイヌ料理が健康食としても優れているということで大変勉強になりました。
是非、皆さんも北海道旅行の際には足を延ばしてみてください。

(3)北海道の郷土料理

1)オハウ、三平汁

北海道にはアイヌ民族と日本各地から移り住んだ人々によって、様々な郷土料理や行事食が受け継がれています。凍えるような冬の寒さに負けない郷土料理は、先住民族であるアイヌ民族から学ぶところが大変多くあります。
サケと言えば北海道ですが、アイヌ民族にとってのサケは、アイヌ語で「カムイチェプ=kamuy(神の)cep(魚)」と呼ばれ、はるか遠い昔から「神の恵み」として感謝してきた大切なタンパク源でした。
北海道の郷土料理「三平汁」の元になったとも言われる「オハウ」(「温かい汁物」の意味)は、塩漬けしたサケやタラなどの身やアラに、ジャガイモ、大根、人参、玉ねぎなどの根菜類をたっぷりと入れて冬にいただく大定番の汁物です。フランスの家庭で出会った煮込みポトフのような料理で心も体も温まる一品ですね。味付けはシンプルに塩のみですが、昆布でしっかり出汁をとるため旨味も感じる優しい味です。
昆布の出汁といえば、苫小牧の日本橋のやまめ活魚料理の店で、美味しい料理に出会いました。それは斎藤芳行オーナー料理長が作られた汁物で、九州の味とは異なり尋ねますと昆布を日常の2倍入れて出汁を取り、北寄魚醤の一滴を落としていると教えてくださいました。まさに昆布のグルタミン酸と北寄貝のイノシン酸の相乗効果でした。

2)エゾシカ肉のステーキ

欧米では、秋から冬かけて珍重されている高級食材ジビエのシカ肉。北海道のみに生息するエゾシカは現在約67万頭、ニホンジカの亜種で国内最大の草食動物です。最近では、低脂質で高タンパク、鉄分たっぷりのヘルシー食材として特に注目を集めています。酸味の効いたハスカップソースや、黒粒コショウ、山ワサビなど添えていただくと美味しいと長女はいいます。
また、個体数が増加しているエゾシカを食べるということは、北海道の森を守り、その大自然と共生することに繋がります。
しかし、私はジビエと聞くと苦手意識が先に出ていました。前博多全日空ホテル総料理長 故西田弘氏(ドイツ料理オリンピック金メダル獲得)に20年以上フランス料理を学び、冬には西洋のジビエ料理を指導していただいたにも関わらず。
フランスのセーヌ川沿いで最高の景色を見ながら、ゴージャスなレストランのラ・トウールダルジャンで番号札のついた鴨のローストのオレンジ添えと赤ワインをいただいたり、パリの商工会議所が運営するフェランデイ校でジビエ講座に参加し、ジビエの卸し方を学んだりしたのですが、独特な獣の匂いがなかなか受け付けられず!!
そこで今回は、福岡市中央区薬院のLa casa di Nao(ラ・カーサ・ディ・ナオ)イタリア料理レストランの石橋尚幸オーナーシェフ(スイス、イタリアの日本大使館総料理長を経て今日に)にお願いして、ジビエ料理について改めてご指導いただき学び直しました。石橋シェフが帰国されて以来、イタリア料理のご指導だけでなく、イタリア旅行の際など沢山の情報をいただき、最も信頼尊敬できる友人です。また、スイスでホテルサービス業を学ばれた奥様にもカービングなどを教えていただいています。

①エゾシカの調理方法

今回、私とのご縁の深いハンターが、新鮮なエゾシカを送ってくれました。
そのエゾシカの骨付きロース肉を使い、塩、胡椒して炭火でロースト、またはフライパンにオリーブオイルを入れてソテーします。
付け合わせはフレッシュハ-ブ、そして季節の野菜や根菜類1人100gを強火で蒸して、色や香りや味を保たせます。
果物は味のアクセントにもなるので、旬の柿を2~3cmの輪切りにして120度で2時間焼いて熟成します。代わりに干柿を使用してもよいとの事です。
林檎は8等分に切り、オリーブオイルできつね色にソテーします。

②ソース2種

石橋シェフが惜しみもなく教えてくださりました。

<赤ワイン・ベリーソース>

辛口赤ワイン100gを1/3量に煮詰めて砂糖5g、ミックスベリー50g、塩0.5g、胡椒を入れて仕上げます。

<マルサラワイン・粒マスタード・生クリームソース>
マルサラワインまたはマデイラワイン100gを1/3量に煮詰めて、粒マスタード、生クリームを入れて仕上げます。
マルサラワインは、イタリアシチリア島のワインで、世界四大酒精強化ワインの一つです。ブランデーを加えてアルコール度数を高めたワインには、その他にスペインのシェリー酒、ポルトガルのポートワインとマデイラワインがあります。

出来上がったお料理を盛り付けていただきました。なんと美味しい!シェフの料理センスのおかげで、マリアージュが素敵。ヘルシーで柔らかく、旨味も凝縮されていて、何より匂いがなく感動の料理を紹介することができました。
シェフいわく、腕の良いハンターが仕留め、上手に血抜きされた肉は大変柔らかく、衛生的に処理されていると匂いもなくて、新鮮で絶品との事でした。 また、今後、エゾシカが日本人のたんぱく源になるためには、このような高い技術が必要であり、日本にはそのような指導者がまだまだ少ないとも言われていました。フランスでは、料理人の職業訓練校でまさに指導がなされていたなと思い出しました。
現在、野生鳥獣が農作物に与える被害は農家の大きな悩みだと聞いています。農林水産省によると、2020年度の被害全額は約160億円であり、対策として狩猟や捕獲が全国で進められていますが、野生動物のほとんどが利用されず処分されているのが現状のようです。
今回、お肉を送ってくれたハンターは、国内外で研修され、北海道の白老の山で経験を積まれているので、ぜひこの技術力を日本人のために発信する、良き指導者になって欲しいと切に願います。
一口食べて美味しかったエゾシカの可能性に目覚めた!!瞬間でした。

3)飯寿司

「飯寿司」は、新鮮なホッケやサケなどの魚とキャベツ、人参、大根、生姜などの野菜や薬味を米麹に漬けて、乳酸発酵させた寿司です。低温発酵によってつくられる「飯寿司」は、主に北海道から東北地方の気温が低い、沿岸部の地域に伝わる郷土料理です。漁師の家でつくられていたものが発祥とされ、正月に食べる定番料理としても親しまれています。冬の寒い時期だけに作られる、北の地方ならではの郷土料理です。
今回、私も家庭で簡単に作れるレシピを考案して食べてみました。新鮮な魚をしめ鯖のように〆て調理するとサラダ感覚のヘルシーな主食兼主菜料理となりました。

4)いももち

「いももち」は、北海道の道央・道東地方の郷土料理で、ジャガイモは皮つきで茹でるか蒸して皮をむき、つぶして丸くして片栗粉か小麦粉を周りに少しまぶして、バターで両面焼きます。醤油と砂糖の甘辛いたれを添えます。
明治の開拓時代には、稲作(もち米)の生産技術が未発達でした。そのため、豊富に生産されたジャガイモやカボチャを「餅」の代用品とし、開拓者たちに大変重宝されました。調理の手軽さから戦時中や戦後の食糧難の時代にも食べられ、現在は北海道の定番おやつとして、大人から子どもまで幅広い世代に親しまれています。
北海道以外にも岐阜県、高知県、和歌山県などにも「いももち」がありますが、九州にも各県あり、使用する芋の種類やつくり方はその地域によって異なります。
とても簡単な一品です。ぜひ、お試しください。

一陽来復の健康学:新型コロナウイルス感染症のオミクロン株の流行

 2021年12月18日時点で日本におけるオミクロン株の感染者は65名確認されています。少しずつ増加傾向がみられており、すでに市中感染している可能性もあります。最近のイスラエルの研究報告では3回目のワクチン接種を受けた人は、2回のワクチン接種の人に比べ新型コロナウイルス感染症での死亡率が90%も低い結果となっています。この事実は一刻も早く3回目のワクチン接種が感染流行予防に重要な対策となることを示唆しています。3回目の接種までに私たちは、マスク着用、手洗い、三密の回避などのほかに何ができるでしょうか。健康維持のためのもう一つの重要なことは、適切な栄養素で免疫システムをサポートすることです。これまでの多くの臨床研究により、ビタミン、ミネラル、必須脂肪酸が免疫において重要な役割を担っていることが明らかになっています。これらの栄養素は、ウイルスや細菌を体内から排除し、侵入してきた侵入者を破壊し、病気や感染症からの回復を助けるという特殊な防御機能をサポートします。免疫系に必要な栄養素、健康な免疫系の基礎となる栄養素として、ビタミンA、B6、B12、C、D、E、亜鉛、DHA(ドコサヘキサエン酸)があります。これらは野菜、果物やキノコ、サーモン 牛肉、鶏肉、牛乳、チーズ、卵、ナッツ、青魚などに多く含まれている栄養素です。これらの栄養素のいずれかが不足すると、感染症にかかるリスクが高くなる可能性があります。これらの栄養素の大半は食品から摂取するのがベストですが、必ずしもそれが難しい場合は、自分に足りない栄養素を補うためにサプリメントを取り入れる方法もあります。ただし、サプリメントは摂り過ぎに注意が必要ですので、サプリメントを購入するときに薬剤師さんに相談してください。

参考文献
1)DOI: 10.1056/NEJMoa2115624
2) Nutritional strategies to support your immune system

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